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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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 どうも皆さんこんばんは、十二日ぶりでした。
 主にオフがバタバタしていて明星小説が書けません。ネタはたくさんあるのに書けません。何てこった。
 という事で、これから書こうと思っているネタを適当に書き連ねてみる。

 ・『光の道標』差し替え版(現在のバージョンを上げてからもっと面白いネタを思いついてしまった……)
 ・戴←翠(朱貴っちゃん視点、扈三娘さん視点)
 ・林冲さんの話
 ・扈三娘さんの話
 ・宋江さんと晁蓋さんの腹の探り合い(何故この二人なのか、判らない人は原点を読もう! 北方版でも可!)
 ・安道全先生と戴宗さんの話(どうも簾屋は安道全先生に戴宗さんのカウンセリングをやらせたいらしいです)
 ・先日突撃した絵チャから着想を得た戴翠(あ、エロじゃないですよ。でもってこれは正月用SSとして書く予定です)
 ・北方版水滸伝の状況設定だけを借りた明星戴翠・林扈(何か各方面から怒られそうな気がする)

 そして本当は戴翠長編を書きたいのだが、それは二次創作では書くべきではないという判断と、何より本館でも手一杯なのにこれ以上捏造長編なんかやってられっかぁ! という簾屋心の本音より、多分やりませんよ。




「――……え……?」

 呻いたのは、自分か、翠蓮か。
 戴宗はその瞬間の光景をにわかに受け入れる事が出来なかった。

 高求が。
 翠蓮の小さな体を、つまみ上げて。


 ――虚空へと、放り出した。


 高求の断末魔の哄笑が聞こえる。

 翠蓮は呆けたように目を見開いている。

 林冲が、扈三娘が、この戦場にある者全てが叫ぶ。

 そして戴宗は、


「――翠蓮っ!」


 駆け出した。
 天速星の力を使いすぎていた。もう指一本も動かせないはずだった。へたばった体を叱咤した。断崖を跳躍し、虚空へと躍り出た。
「翠蓮!」
 左手を伸ばす。
 指の先、翠蓮が見開いた目に大粒の涙を浮かべ、
「戴宗さんっ……!」
 少女の小さな手が伸ばされる。
 自由落下。二人の体が激しい風に包まれる。その唸りは耳を聾し、それでも戴宗は翠蓮の名を呼んでいた。翠蓮もまた戴宗の名を呼んでいた。
 伸ばした指先が、触れる。
 触れ合う。

 掴んだ。

 戴宗は翠蓮の指先を捉えると、乱暴に引き寄せた。彼女は戴宗の首にギュッとしがみつく。戴宗もまた彼女の腰を強く抱いた。
「しっかり掴まってろ、翠蓮!」
「はい、戴宗さん!」

 ――離すものか。

 ――離してたまるものか。

 ――二度と、失ってたまるか。

 ――この暖かい、陽だまりのような笑顔を向けてくれる人を、二度と、失いはしない。

 右手を振るう。
 伏魔之剣の重量と遠心力で、体の向きを戦場の方へと戻す。

(だから頼む、天速星……!)

 俺にこいつを助ける力をくれ。


 神行飛龍。


 伏魔之剣からほとばしる炎が、戴宗の体を断崖の戦場へと押し上げる!
 ――だが、

「――――っ!?」

 失速する。
 炎が消えている。
 星の力の限界。これ以上はもう――

「――戴宗!」

 諦めかけた戴宗を叱咤するような強い声。
 断崖の淵に、林冲が立っていた。

「掴まりなさい!」

 蛇矛の石突きをこちらに差し出してくる。
 しかし掴めない。左手には翠蓮が、右手には伏魔之剣が――

 ……逡巡は、一瞬だった。

「戴宗さん……!?」
 耳元で翠蓮が悲鳴じみた声を上げる。


 戴宗は、伏魔之剣を離した。


 空手になった右手を伸ばす。
 林冲もまた、身を更に乗り出して戴宗に掴ませようとする。
 戴宗は石突きを掴んだ。
「…………っ!」
 だがそもそも無謀だった。断崖の淵からあれだけ身を乗り出して二人分の体重を支えようなんて。林冲は姿勢を崩し、もろともに断崖へと、
「――行かせないんだから!」
 凛とした声が響き渡る。
 扈三娘。彼女もまた駆けつけていた。林冲に後ろに立ち、彼の浮いた足を掴むと、
「ぇぇぇええええええええええいぃっ!」

 林冲ごと、戴宗と翠蓮を引き上げる!

 三人の体は弧を描く。
 宙を、戦場の上を飛ぶ中、戴宗は蛇矛の石突きを離した。そして今度こそ両手でしっかりと翠蓮を抱き締める。
 ――離さない。
 ――絶対に、離さない。
 歯を食い縛り、姿勢を入れ替える。自分を下に、翠蓮を上に。半瞬後に戴宗の体は地面に接触した。バウンド。それから再び地面の上を転がる。
 落着の衝撃と荒地の砂利から、戴宗は翠蓮を守りきった。彼女の下敷きになったまま大の字の姿勢を取る。
 空が、青い。
 清々しいのか忌々しいのか分からない。ただ疲れていた。空の青さも戦の行方もどうでも良くなるほどに。
 だが、
「戴宗さん……」
 どうでも良くない事が、一つ。
「――……何でおたくが泣いてんだよ」
 翠蓮は戴宗の体に乗っかったままだ。小柄な彼女はそんなに重くない。それはどうでもいい。両手で顔を覆って、泣きじゃくっている事に比べれば。
 普通泣くか、と納得した。死にかけた化け物に断崖の外に放り出されたのだ。これで泣かない女は扈三娘や孫二娘くらいだ。
 だが、違った。
「だって、戴宗さん……伏魔之剣を……」
 ――翠蓮には、以前、話してしまっていた。
 伏魔之剣の事を。
 養父の事を。
 戴宗は、手を伸ばした。
 翠蓮の頭に触れる。
「――おたくが無事なら、それでいい」
 それが限界だった。

 戴宗さん!? 翠蓮の驚きと焦りの声を聞きながら、戴宗は意識を失った。




 夢を見た。
 どことも知れない白い場所で、戴宗は、彼と向き合っていた。
 エプロン姿で、彼はあの日と同じように笑っていた。
 泣きたくなった。
 胸を掻き毟りたくなるほどの懐かしさと叫びたくなるほどの喜びに、泣きたくなった。
 だが戴宗は泣けなかった。泣かなかった。
 そして何と声を掛けていいのか、言葉が見つからない内に、彼の方から笑みを含んだ声を投げてきた。

 ――やあ戴宗、久しぶりだね。

(……ああ)

 ――無茶ばかりして。お前は相変わらず、私に心配を掛けるね。

(……悪ぃ)

 ――ははっ、随分と素直になったね。

(……悪ぃ)

 ――ん?

(伏魔之剣……捨てちまった)

(あんたが、俺のために打った剣なのに)

(あんたの、形見なのに)

(俺……伏魔之剣を、捨てちまった)

 ――いいんだよ。

 ――いいんだよ、戴宗。

 ――あんな物、もっと前に捨ててしまって良かったんだ。

 ――私はずっと後悔していたんだ、あの剣を打った事を。あの剣をお前に遺してしまった事を。

 ――お前はあの剣に縛られていた。私はそれが辛かった。

 ――でも、お前はあの剣より翠蓮ちゃんの命を選んだ。

 ――父ちゃんは、それが嬉しいよ。

(……父ちゃん――)

 ――……ああ、嬉しいな、戴宗。

(?)

 ――初めて私の事を、「父ちゃん」って呼んでくれたね。

(…………)

 ――戴宗。

(……何だよ、父ちゃん)

 ――父ちゃんに……笑ってくれ。


 そして、戴宗は――――




 目を覚ました。
 見知らぬ天井と見知らぬ寝台。ここはどこだろうと思うより先に、自分が深く眠っていた事に驚いた。夢を見るなんて、何年ぶりの事だろう。養父・洪信の最後の瞬間は、戴宗を眠りから遠ざけるのに十分なものだった。
 気持ちがひどく楽だった。
 何年も背負っていた荷物を下ろした。そんな気がした。
「――戴宗さん?」
 すぐ傍から声がした。
 翠蓮がいた。枕元の椅子に座って、丸く開いた目でこちらを見下ろしてきている。
 その目に、涙がジワリと浮かんだ。
「良かった……」
 口元には安堵の笑み。
「戴宗さん、ずっと起きなくて……丸二日、眠ってたんですよ? 林冲さんも、扈三娘さんも、宋江さんも、皆、皆心配して――」
「――そうか」
 皆に心配された。
 その事実を、戴宗はやけに静かな心持ちで受け入れた。悪い事をしたという気さえしていた。
 ほんの数日前の自分なら、そんな事を考えもしなかっただろう。他人の心配なんて鬱陶しいものでしかなかったろう。翠蓮が向けてきてくれる気遣いの眼差しさえ煩わしいものだった。逃げ出したくなるほどに。
「――戴宗さん」
「何だよ」
「ごめんなさい」
 何故、翠蓮が謝るのだろう。
 疑問と共に改めて見やれば、彼女は肩を落として落ち込んだ表情を見せている。
「無理を行って、戦場までついてきたのに……私、やっぱり足手まといになっちゃいました。戴宗さんの助けになりたくて、ここまで来たのに……」
「――気にすんな、おたくは元々足手まといだ」
「酷い戴宗さんー!」
 いつものように叫んで、しょげて、しかしすぐに立ち直って。
「でも、戴宗さん」


「私は戴宗さんと、一緒にいたいです」


 戴宗は軽く目を見開いた。
 彼女の顔が、茹でダコのように耳まで真っ赤になっていたからだ。
「足手まといになっても、邪魔になっても、私は……戴宗さんに、どこまでもついていきたいです。次の戦場も、その次の戦場も、梁山泊で待ってたりしないで、ずっと戴宗さんについていきたいです。
 だから、連れてってください」
 お願いします、と頭を下げる。
 戴宗はチッと舌打ちした。
「――先に言いやがって」
「え?」
 翠蓮が顔を上げた。そのきょとんとした顔を半ば睨むように見やり、それから、いつものようにぶっきらぼうに告げた。
「ならちゃんとついてこいよ、翠蓮」
「――はい!」
 蕾がほころぶような笑顔。

 戴宗の口元に、あるかなしかの笑みが浮かんだ。








 長ーっ!
 長い、長いよ簾屋さん! 捏造と妄想もここまで来るとアイタタだよ! でも書いてて楽しかったからオールオッケー! 苦情は原則受け付けないよ!

 とまぁ、以上が一時構想した戴翠捏造長編のラスト辺りのシーンなのですが、ここまで書いておいて怒られそうですが、この話は多分お蔵入りです。
 理由は、この話は二次創作ではやってはいけないからです。だって高求(人偏に求は出ないので求で代用しました)倒しちゃってるし。
 これは、「こういう展開になったら基本的に簾屋が楽しい」という簾屋的明星クライマックス願望編です。
 原作がああいう形で終了を迎えたから書けるものでもありますが、それでも、二次創作ではやっていけない気がして、構想は途中でやめました。
 ちなみにその構想の中では、あり得ない事に晁蓋さんが最後まで生存しておりました(何であり得ないかは原点を読みましょう)。そしてあり得ない事に林扈もガチで成立してしまいました(何であり得ないかは以下略)。
 ところで衝動のままに一発書きしましたが、この戦場、一体どこでしょうね? 自分で書いててわけ分かりません(いつもの事じゃん)(まあそうだね)。


 とにかく、簾屋的には戴翠はここまでしないと進展しないのが理想。
 お互い想い合っているけれど、戴宗さんが色々抱えてがんじがらめになっているせいで身動き取れなくなっていて、翠蓮ちゃんはそれを一緒に背負いたいとか思ってみるけれど戴宗さんは背負わせてくれなくて、とか何とかグルグルしていればいいよ。
 どちらにしろ、戴宗さんは自分の中で色々なものに区切りをつけないと、先に進めないと思う。翠蓮ちゃんとイチャつくのはそれからでいいよ、うん。
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お久しぶりです!
こんばんは簾屋さん!以前エチャご一緒させていただいたりしです!
戴翠長編読んでて泣きそうになりました!
離すものか~二度と、失ってたまるか のシーンと伏魔之剣を手放すシーンが堪りませんでしたっ!
最初から是非読みたいですが二次創作でやるべきではないっていうお気持ちもわかります…
そこは原作ありきですからね^^
でも本当に素敵なお話でした!あなたは神か←

長々と失礼しました!それでは^^
あ、あと今度リンク貼らせていただいてもよいですか…?
りし 2009/12/02(Wed)19:59:03 編集
先日はお世話になりました!
 こんばんはりしさん! コメントありがとうございました、そしてお返事が遅くなりまして本当に失礼しました簾屋です!
 突発的に書き散らした頭の可哀相な妄想をお褒めいただき、本当にありがとうございます。改めて読み直すと、まあ描写は足りないわ唐突だわで何か色々悲しくなってきますが、りしさんに「泣きそうになりました」と言っていただいた事で、ブログでの書き散らしという形式で、荒い形であっても、この話を表に出して良かったと思えました。
 読んでくださり、本当にありがとうございます。

 私も長々としてしまいましたね。うっかりうっかり。
 リンクにつきましては、先日の絵チャでお話させていただいた通り、好きに貼ってやってくださいませ。こちらからも貼らせていただきます!
 それでは~。
簾屋 2009/12/09(Wed)00:58:44 編集
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