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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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 北方謙三『楊令伝』の楊令殿のどこがいいのか、教えてください。
 楊令殿、公式サイトの人気投票で一位なんですよね。何故? 何故楊令殿が? 私は李俊殿や項充殿のような古参同志で劣化がそこまで進行していない方が好きです。いや、「李俊も劣化した!」という意見もあるのでしょうが。
 でもって北方岳飛殿のどこが素敵なのかもどなたか教えてください。とても素敵に見えないのは、北方版に限らず全てに岳飛に言えるのか(簾屋は田中芳樹『岳飛伝』の岳飛も嫌いです)。


 まあそれはそれとして、ここのところの読書記録とそれに関する四方山な話でも。
 その前に、拍手ありがとうございました!


 ここ最近読んだのは、

 田中芳樹『紅塵』
 井上祐美子『臨安水滸伝』
 井上祐美子『女将軍伝』

『紅塵』は、抗金名将の一人・韓世忠の息子・韓彦直を狂言回しに、嫁・梁紅玉を真主人公に据えた、秦檜死後の南宋と金の騒乱を描いた物語。
 韓世忠殿がね、格好いいんだ。ツイッターかこのブログでも喚いた気がするが、楊令殿よりも岳飛殿(北方・田中問わず)よりもずっとずっと格好いい。そうだよ、男は結婚して子供こさえて父親になって嫁を大切にしてナンボなんだよ!
 ……え? 北方岳飛は結婚して子供こさえて父親になって嫁を大切にしてる? うん、そうだね。でも変な増税をやらかして民衆の蜂起を呼んで「民に裏切られた」とかふざけた事抜かしてるあいつを私は認めない。
 この物語だけでなく、南宋高宗期の抗金を扱う物語で大体出てくる話だと思うのだが、いわゆる抗金名将という連中の中で韓世忠だけがただ一人岳飛を冤罪で殺した秦檜に「『莫須有』(=かもしれない)で殺したのか!」と詰め寄っているそうな。
 北方韓世忠はそんな事してくれるんだろうか。してくれないだろうなぁ。
 そして北方韓世忠には多分息子が生まれないだろうから、一体誰が岳飛の名誉回復に伴う遺族への没収財産返還事業をやるのだろう(『紅塵』では、韓彦直がこれをやった、とあります。『宋史』の列伝には韓彦直伝がないから簾屋はこの件について確認してませんが、『宋書』辺りには記述があるんだろうな。『宋書』はうちの職場にないからなぁ)。
 いやまあ、どうせ『楊令伝』の続編『岳飛伝』は岳飛が死ぬところで終わるだろうから、その後のゴタゴタはやらないんだろうけど。でも北方先生、岳飛の死因は拷問死で先生の好きな野戦での戦死ではありませんが、その辺りはどうするんですか捏造ですか?
 あ、あと、北方水滸クロニクルに海凌王は出てくるんだろうか。もし出てくるとして、これが実は「楊令が女真族の妾との間にこさえた男子」とかだったら簾屋大爆笑です。色んな意味で。

『臨安水滸伝』は、上記『紅塵』と少し時代がかぶります。岳飛死後、秦檜死亡前の南宋は臨安で生きる二人の青年が巻き込まれる岳家軍隠し軍資金を巡る物語。
 井上祐美子という作家は市井の生活をちゃんと描写してくれるので、簾屋としては参考にすると共にリスペクトを捧げたり。色々と勉強になります。中華物を書きたいって人は、最低でも井上祐美子は読んでおけと言いたい。
 巻末に挙げられている参考資料も参考にしたいけど、現地の書籍も色々含まれている段階で私はどうすればいいのだろう。(神保町の中国書籍専門店か中華街に行け)
 この物語で読ませるのは、秦檜の描写ですかね。田中芳樹『岳飛伝』で描かれたような絶対的で憎たらしい悪人ではない、南宋趙氏に仕えて生涯を終える覚悟を決めた、一本筋の通った有能な宰相がそこにいます。
 彼が言う「岳飛の忠義は、どこか違う」という言葉は何か色々考えさせる。岳飛ってのはきっと、民衆にとっては蛮族を蹴散らしてくれる偶像的ヒーローだけど、高宗や秦檜のようなこの時代の朝廷上層部にとっては頼りになる以上に扱いに困って非常に危険な存在だったんだろうなぁ。
 それでも岳飛は中国最大のナショナル・ヒーローで、秦檜はそれを陥れた奸臣中の奸臣(確か『宋史』では秦檜は奸臣伝に入ってたよな)。秦檜の功績って結構大きいと思うんだが、歴史上外敵の侵入に悩まされてきた漢民族にとっては金の侵攻と戦った岳飛は三国時代の英雄たちが平気でかすむほどの英雄なんだとさ。岳飛に比べれば、日本なら皆大好き諸葛孔明も「は? ……ああいたっけ、そんな奴」なんだって。

『女将軍伝』はここでチラッと上げた明末の女性将軍・秦良玉の反省を描いた物語。
 日本の作家で、秦良玉を取り上げたのはこの本が初めて。そしておそらく、これ以外は出てこないんじゃないだろうか。だって日本人は、三国以外興味ないし。岳飛だって、田中芳樹や北方謙三が取り上げなかったら知らなかった、って人の方が多いだろうしね。
 それにしても井上祐美子先生は、戦う女性もきっちりと描いてくれる。
 儒教発祥の地でこってこての男尊女卑思想に凝り固まっているはずの中国だが、実は名のある女性武将は日本よりも多い。上記でも登場した梁紅玉なんかその筆頭だし、皆大好き三国時代だったら孫尚香、唐代だったら高祖の娘で娘子軍を率いた平陽昭公主などなど色々いる。
 しかし私は「日本の女性武将と言えば?」と聞かれると巴御前しか出てこない。確かに簾屋、日本史は専門外ですが(大学時代の専攻は西洋中世史でした)、他にいましたっけ?
 まあともかく秦良玉お母様である。兄上と弟君よりも強く知略の才を示し、出陣する旦那様にくっついてちゃっかり初陣を飾り、見事な功績を挙げるも上官が阿呆だったせいで報われず。
 旦那様が冤罪でお亡くなりになったり不慣れな野戦を強いられたりと色々あったけれど朝廷の阿呆どもも認めざるを得ない功績を立てていった秦良玉お母様、お見事です。素晴らしいです。戦う女性は素敵だと諸手を上げて喝采させていただきます。
 女性としての苦悩や女だからと受ける圧迫は多々あれど、その全てをねじ伏せ、あるいは無視して、「力ない女子供のために」戦う秦良玉お母様。
 そうだよ、女性武将は中華に数多いた。巾掴英雄と称えられた彼女たちは確かにいた。それを何故無視するか北方謙三!(結局そこか)(すいません)


 で、『女将軍伝』を読み終わって。
 簾屋が思ったのは、

 簾屋(この人が書く『楊家将演義』が読みたい……!)

 である。
『楊家将演義』。明星でもお馴染みの楊志のご先祖・楊業とその一族の戦いの物語です。北方先生がこれを元に『楊家将』とその続編『血涙』を書いてますね。
 これは読みたくないんですよ。絶対に。
 何故か? 穆桂英が出てこない『楊家将演義』なんかに用はねぇ!
 そもそも『楊家将演義』は楊家の男どもよりもその女房や妹たちの方がよく活躍している。そりゃあ英訳タイトルも『ヤン・レディゼネラルス』になるよ。『レディ・ジェネラル―淑女騎士団』なんていうライトノベルも誕生するよ。
 女性陣が活躍してこその『楊家将演義』! 穆桂英がとっ捕まえた楊家の息子(楊宗保)と無理矢理結婚してこその『楊家将演義』!
 田中芳樹先生が編訳をしてくれるという話は何故か消え、日本語で読める『楊家将』物と言ったら女性があんまり活躍しない北方『楊家将』のみ。
 お願い、井上先生! 『楊家将演義』書いて! 秦良玉お母様みたいに戦う佘賽花おかーさんとか書いて! お願いしますー!


 あー、語った語った。楽しかった! でも俺得すぎて他の方がついてきてくれているか不安だぜ! その辺りを盛大に無視するのがうちのブログの特徴だけどね!
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