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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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 今日図書館に返さないといけないので、その前に感想を書いてみる。
 いや、北方水滸のように読了後に全部まとめて書きたかったんだが……駄目だ、十三巻は十三巻で書きたい! 何これ超ウケるんですけど!

 というわけで、下記リンクから『楊令伝』十三巻の感想、行きます。
 ネタバレに関する配慮は一切しないので、まだ読んでいない方でこれから読もうと思っている方にはお勧めしません。
 構わないぜドンと来い! って方だけ、以下からレッツ・ゴゥ!




 はい行くよー。


 ・戴宗殿
 前巻まで飲んだくれて愚痴言って公孫勝や喬道清や武松に殴られて気絶させられるばかりだった戴宗殿が、ここに来てやってくれました!
 やべぇ戴宗殿かっこいい!

「それでも、王定六が駈けながら死んだと聞いた時は、羨ましかったのだ。
 そんなことはどうでもよく、やはりいまは五人の部下のために駈けたい、と思った。」(楊令伝十三巻P239)

 とか、

「こうして走っているのは、ひとりずつ闘って死んでいった、五人の部下と一緒なのだ。だから、止まるわけにはいかない。」(同P240)

 とか、あんた最高にカッコいいよ! これまで下がりっぱなしだった戴宗殿株が(簾屋の中で)急上昇だよ! まさかの買い注文殺到だよ! 株価上昇で株主ウッハウハだよサイコー戴宗殿!(落ち着け)
 とにかく本当に久しぶりに走った戴宗殿が格好良かった。それだけです。
 そしてこの章で、やっとこの巻初の公孫勝殿の出番。「公孫勝」の文字だけですごく安心してしまうのは、公孫勝殿が他の連中と違ってキャラがしっかりしている上にブレず、そしてムカつかないからだ。安心するなぁ。
 で、この巻でそんな戴宗殿を、

「ああいう男は、梁山泊を腐らせるだけだ」

 とか何とか評しやがった致死軍二代目・侯真を私は顔の骨格が変わるほどに殴ってやりたいんだがどうだろう。お前は仕事をちゃんとやれ。戴宗殿は、そりゃあ確かに楊令伝で性格がアレな事になってしまったが、ちゃんと梁山泊のために仕事しているぞ! それに比べてお前は何だ! 私は知っているんだぞ、お前、次の巻で戴宗殿の情報を疑って(ネタバレになるため割愛)なんていうとんでもない大ポカしただろ! 公孫勝殿も劉唐殿もそんな事しでかさなかったぞ!
 まったく、梁山泊が梁山泊に拠る前からの古参同志に何て言い草だこの駄目な二代目め。


 ・李俊殿
 是非頭領になってください。私は貴方が梁山泊を率いるところが見たいです。そして皆で海に繰り出せばいいよよーそろー!


 ・張敬
「魅力のない二代目」が多い中で、出番は少ないけれどちゃんと仕事していたこの子が可愛かった……。ああ、何てこった。まともな二代目がまた一人逝ってしまった。
 ところでこの章で、舟の舳先に仁王立ちしていた項充さん。何やってんですかあんた。


 ・韓世忠
 の出番が少なくてちょっと悲しかった……。どうも私は、北方版のこいつが結構好きらしい。
 きっかけは分かってます。何巻かで「『全部ぶち壊したいんだろ?』と楊令の耳に囁いてやりたい」とか何とか考えたこいつのその歪みっぷりが逆に魅力に思えてしまったからです。簾屋は歪んだキャラが大好きです。
 で、その歪んだ韓世忠に史実通り嫁の梁紅玉姐さんがいて、姐さんの武術・軍略の見事さに「俺の嫁は天下一だ」とか何とか躊躇う事なく惚気ていたら、私は多分韓世忠に本気で惚れていただろう。簾屋はノーマルカプ厨の上、「夫婦萌え」というおかしな萌えも持っています。
 女に対し、あるいは義母に対しおかしな屈折を持っているけれど、嫁ラブ。そんなキャラだったら、件のスレで文句を言われる事もなかっただろうなぁ……。
 まあ、楊令伝で梁紅玉姐さんが削除されたのは、「女が男の生き様の舞台(=戦場)にしゃしゃり出てくんじゃねぇ」という北方の駄目なハードボイルドが前面に出てきたからだろう。アホか。


 さて、ここから思いっきり否定的な意見を書きます。
 楊令伝が好きな方、楊令、岳飛、花飛麟などのキャラが好きな方、ここから先は読まれない方が身のためです。
 一応反転するようにしときます。


 ・岳飛
 田中芳樹『岳飛伝』の岳飛も嫌いですが、私は北方の岳飛も嫌いです。殴り倒してやりたい。
「民のため」とか何とかおためごかしを言って、こいつは結局自分のために戦争をしたいだけ。そのために軍備増強、増税。お前はアホか。そりゃ民も反乱を起こすよ。
 作中こいつが「民に裏切られた」とか何とか言っているけれど、裏切ったのはお前が先だろう。軍に人を取られ、わけの分からない軍備増強のために金を取られ、それが力ない民衆にとってどれだけ辛い事か、お前には分からんのか。正統的な水滸伝の好漢がこの世界にいたら、お前、殺されてるぞ?
 政治能力のない奴が机上の空論だけで政治をやっちゃいけない。それがよく分かる一例でした。
 そして抗金に走る岳飛。それであれですね、禁軍と対峙中に臨安から来た停戦・出頭命令を無視しまくって「俺の十年無駄になった!」と叫んで、命令聞かなかったからって謀反の冤罪かけられて、秦檜に殺されるって寸法ですねよく分かります。


 ・楊令
 頭領が向いてないんだなぁ、楊令殿……。
 というか、この人は多分対人スキルが未熟なんじゃないだろうか。

「話すことは不得手だ、という意識はあった。特に、人の心の機微に触れる言葉が、うまく見つからない。なんとなく、上っ面の話をしてしまうのだ。」(同P14)

「これまでも、誰かに対したとき、適切な言葉で語りかけなければならない、と思い続けてきた。みんな、頭領の言葉として聞くからだ。しかし、適切な言葉が出てきたことは。ほとんどなかったという気がする。」(同P15)

 という描写は、楊令殿が口下手、っていうよりも、対人関係を築くスキルが足りない方が強い気がする。小さい頃から山の中で世捨て人の武人とそのお母ちゃんと暮らしていれば、まあ、当然ですが。
 でも頭領はそれじゃ駄目でしょ。特に楊令殿が梁山泊に合流した時期は、あんな人やこんな人の子供が入山した前後だったりする。
 お父ちゃんたち以上の志を持たず、おそらく「親父がここで戦っていたから俺もここで戦う」くらいの決意しか持っていなかった二代目たちを取りまとめるには、宋江殿並みの対人スキルは最低でも必要だった。しかし楊令にはそれがない。
 私はそれが、李英の離反を招いたのだと思っている。北方の事だから、「俺たちの時代に比べて今の若い連中はよぉ」とガッチガチの段階の世代の思考で二代目のキャラ設定をしているから、李英の離反も「根性がなく、『俺はもっと出来る』と根拠のない自信を持って、与えられた仕事を全うせずに不満ばかり並べてすぐに仕事を辞める駄目な若者」を描いたのかもしれないが。
 ただ、もうちょっと気にかけてやっても良かったんじゃないだろうか。そうすれば多分、李英は離反しなかった。そしてあんな事(十四巻のネタバレになるため、とりあえず今は割愛)にはならなかった。
 で、もう一つ。

「富の力で、いつの間にか中華を統一する。今は、そういうかたちの戦をやりたかった。梁山泊が富めば、他国の民も梁山泊を求める。梁山泊と同じことができないかぎり、国とは認めないようになる。
 そうなったとき、中華全土はひとつになる。
 それが夢のような話だと、楊令にも解っていた。しかし、梁山泊が五十年富み続ければ、絵空事ではなくなってくる。百年続けば、周辺から梁山泊に同化し、実際にひとつになってもおかしくない。」(同P18-19)

 すいません楊令殿、簾屋は頭が馬鹿ですから、そのプランは意味が解りません。
 富の力で中華統一、って何さ。梁山泊と同じ事が出来ない限り国として認めないようになる、って何さ。周辺から梁山泊に同化する、って何さ。もう訳わかんない!
 つまり、こういう事かしら?
 税を安くし、国は交易で国費を稼ぐ。他の所よりも市場にかかる税が安い自由市場には物が集まるようになる。するとそこで商業が盛んに行なわれる。周辺の農民もそこで作物を売る。すると他の市場で売るよりも多くの利益を得る。
 これを、梁山泊モデルとして、
「梁山泊モデルに皆憧れる→それをやらない国なんか国とは認めねぇぜ!→民が自分たちで梁山泊モデルを実施→それが他地域に伝播→国家が存在意義を失う→中華統一」
 ――という流れでいいんでしょうか? 間違ってても知りません。
 ところでこれには二つほど見落としがあるんだが。
 その一、中華の外から外敵が進入した時、誰がそれに当たるのか。
 その二、社会保障事業はどうするのか。
 その一について。国家の第一の仕事は国土と国民を守る事。そのために税を取っているようなものです。言い換えれば、国民は税で「国に守ってもらう権利」を買っている。
 しかしこの梁山泊モデルが中華全土に伝播した時、それは本当に中華統一なのか。ただ、商業だけが秩序となった無政府地帯が広がるだけではないのか。実際、楊令は作中で「梁山泊をこれ以上の広さに広げない」と言っている。つまり、梁山泊モデルを採用しても、それはそこが「梁山泊と同じような性質を持った地域」になっただけで「梁山泊国」になったわけではない。
 では、こうした地域にモンゴル族が侵入したとする。
 誰がそこの地域の住人を、モンゴル族から守ってくれるのか。
 その二について。
 これはまだその概念すらないか。しかしこれまでの国家間を覆すとか言うなら、商業による金満国家の道よりも貯めた金で教育・医療の充実とかやってほしい。
 そしておそらく、梁山泊化した地域には誰もこういう事をする者は出ない。というのも、教育も医療も商業より利益は出ない。利益優先になりかねない梁山泊モデルを下手に導入するとそういう事になるんじゃなかろうか。
 どちらにしろ、楊令殿のプランはわけが解らん。そしてここじゃまとめきれん。再チャレンジだ!


 ・花飛麟
 2ちゃんの北方水滸・楊令伝を語るスレで話題に上った岳飛とのやり取りがこちら。

「花飛麟殿は、どう思われる?」
「岳飛殿の言われることが、当たり前のようでいて、欺瞞に満ちていると思いますね。当たり前のことをやって、中華は駄目だったのです。誰も、きちんと治めることはできなかった。天下を求めることは、欺瞞の中にいる自分を肯んずることです」
「俺は、天下を求めてはいません」
「他を排する。つまり、金という国を排して、国を作りあげる。それは、漢民族としての天下を求めている、ということでしょう」
「難しい。実に、難しい」
「難しくはありません。金は、どういう国なのですか。女真族がいて、契丹族がいて、渤海の民もいる。漢民族だけが人といっている岳飛殿と比べて、はるかに他を受け入れていると言えるでしょう。漢民族は、他の民族を受け入れず、この広い国土を自らのものにしようと言うのですか」
「俺が単純な男に見えるのだろうな、花飛麟殿には」
「そういう事ではありません。漢民族の中に、違う国がある。それを認めることで、新しいなにかがはじまる、と考えられないのですか」

 太字表記が特に問題にされた発言ですよー。
 ところでここのやり取り、打っていて改めて思うんですが訳解らない。頭の良い、「国とは何か」「民とは何か」という問答をしているようで、実はただ上滑りの言葉を並べているだけなんですよね。大体、噛み合ってないし。
 岳飛は別に、抗金=女真族排斥、とは言ってないんですよ。ただ、自分たちの国によその国の連中がやってくるから闘う。岳飛が言っているのはこれだけです。軍人として極めて当たり前の事です。禄を貰ってんだからそれくらいやれ、この給料泥棒。
 しかし、この花栄殿のドラ息子は何を曲解したか抗金=女真族排斥と言っている。好きな人に死なれて頭が悪くなったんですか花飛麟殿?
 大体、漢民族は別に異民族を受け入れていないわけではない。この時代の宋にはアラブ人とかたくさんいましたしね。見下してはいますが。
 あと何か、太字表記のところで花飛麟殿はまるで金がたくさんの民族が仲良く暮らすいい国だ、と取れる発言をしていますが、そんな事はないでしょう。大体金はすぐに腐敗するし。



 ああ、語ったけれど語り足りない。というかきちんと語るには語彙も知識も少なすぎる!
 とにかく、色んな意味で面白い楊令伝十三巻。十四巻が楽しみだ。
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