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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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 と言うか、小話。
 突発的に戴翠が書きたくなりました。しかも夫婦(めおと)。しかも子沢山。
 そして『~自家発電』の2でチラリと語った、戴さんちの五人の子供たちの名前を何気に出してみた。

 時制的には、本編終了後、『水滸後伝』前。
 時代は既に南宋、何か北から女真族の皆さんが押してきてますよー、ってな頃。
 でもって、明星には出てこなかった名前がいくつか出てきてます。そして明星で活躍していたあの人とかあの人はあえて出してません。何故か、は聞かないでください。


 というわけで、捏造未来、戴翠夫婦編。
 ほほぅ、どんなものか読んでやろう、という方のみ下をクリック。


 の、前に。
 拍手、いつもありがとうございますー!

 やたらと長い戴翠捏造未来編ですが、これを三月六日の香川オフに参加された方々に捧げます。誘われたのに、実に無粋な理由で参加できなかった簾屋からの、せめてものお詫びとオフ会開催のお祝いです。




 ――たくさんの場所に行って、たくさんの人に会って、たくさんの戦いを経験して。
 私たち替天行道の戦いは、終わった。


「女将さん、戻りましたー!」
「お帰りなさい。奥に入って休んで。ご飯もお酒も用意してあるから」
「うぃっす!」
 蘇州の方まで行って戻ってきた飛脚を帳場からねぎらって、奥へと通す。その間にも別の飛脚が荷物を手に「行ってきやす!」と威勢よく声を張り上げたり、「女将さん大変です!」と何事か厄介事を持ち込んだり。私はそれらをてきぱきと捌く。

 この商売を始めて、もう何年になるか。

 元は梁山泊の兵士たちで、今は私たち夫婦のやる飛脚屋の飛脚をしている彼らは、梁山泊解散に当たって行き場を見つけられなかった人たちだった。そういう人たちの受け皿はいくつかあった。一番大きなのは李俊さんの所で、その次に関勝さんや朱仝さん、呼延灼さんの所だった。小さい所では小七さんとか、孫新さんと顧大嫂さんの所とか。
 その小さな所の一つに、うちの飛脚屋がある。

「女将さん、ちょっといいですか」
「どうしたんですか、番頭さん?」
「旦那さんは、どちらに?」
「奥にいませんか?」
「いえ、そっちには坊ちゃん方がいるだけで」
「うちの人じゃないと駄目な配達ですか?」
「届け先は臨安、物は紫錦と木箱に納められた玉の帯留め、期限は明日の昼まで。特別料金に、更に上乗せしてくださっておりまして」
「……分かりました。ちょっと待っててください」
 私は帳場を離れて、店の奥に入った。
 戻ってきた飛脚たちの休憩室や仮眠室がある奥の、その更に奥が私たち家族の家だ。お昼も大分過ぎた今の時間、五人いる子供たちは勉強している――

「行くぞ小玉! 『神行旋龍』!」
「うきゃきゃきゃきゃ! 甘いわ兄ちゃん、『天転旋舞』!」
「うにゃっ!? ――お兄ちゃんお姉ちゃん!? こっちに何か飛んできてるんだけどー!?」
「駄目だよ素蘭姉、何かスイッチ入っちゃった。……ほら天娘、こっちおいで。そこにいると巻き込まれるよ」
「あい、才おにいちゃん!」

 ――はずもなかった。だってあの人の子供ですもの。
 即行で勉強に飽きたらしい長男と長女がかつての私たちの技を真似して武器代わりの棒を振り回し、次女がそれに巻き込まれて涙目で突っ込みを入れて、一体誰に似たのか、妙に達観した次男はまだ小さな三女を引き寄せて部屋の隅に避難している。
 とりあえず、
「……ソコマデニシナイトオコリマスヨ」
「「…………っ!」」
 低めに抑えた声で言えば、上の二人はピタリと動きを止める。そして下の三人も顔色を変えてこちらを見る。
「オカアサンニ、イウコトハ?」
「「「「「ごめんなさい!」」」」」
「……よろしい」
 一斉に頭を下げた子供たちを許し、それから尋ねた。
「それで貴方たち、お父さんは?」
「裏だよ、母ちゃん」
 どうもあの人の大剣のつもりらしい棒で、部屋の外、庭の方を示し、
「昼寝するってさ」
「ありがとう」
 まったく、あの人ったら。口の中で呟いて、私は庭の方へと向かい、
「……それと、信、小玉、素蘭、才、天娘」
 無感動な口調で子供たちの名前を呼べば、背後、五つの気配がピィンと緊張する。
 私は振り返らないまま、言った。
「ちゃんと、勉強しなさいね?」
「「「「「はい!」」」」」
 それから庭に出れば、気を緩めたらしい子供たちの、「ほらぁ、兄ちゃんのせいで母ちゃんに怒られた~」「乗せたのはお前じゃんか小玉!」「もうやめようよ~!」「だから諦めなよ、素蘭姉」「天娘もあそぶー」……ああもう、あの子たちってば。でも今はあの人を見つける方が先。
 庭に出て、裏の方へと回ると――

 狭い庭に根を張った桃の木の下で、橙頭をした私の夫はいい気に昼寝をしていた。

「……あなた」
 返ってくるのは寝息、いびき。私は溜め息一つ、それから深呼吸。
 そして、怒鳴る。

「戴宗さんっ!」
「うぉわっ!?」

 耳元で昔のように呼べば、この人はあっさり飛び起きる。昔に比べて大分眠りは深くなったけれど、それでも――まだ浅い。
 そして昔に比べて私に色んな表情を見せてくれるようになったこの人は、上体を跳ね起こしただけで根方に座り込んだまま、驚きの顔で私を見、
「……何だ、お前か」
「何だ、じゃありません! 仕事サボって何してるんですか!」
「んー……昼寝?」
「そんなの見れば判ります!」
「……どー答えろってんだよ、翠蓮」
「そんな事より仕事です」
 両腰に手を当てて見下ろす私に、この人はすごく嫌そうな顔をした。
「何お前、お休み中の旦那様を酷使する気?」
「はい」
 十年、どころかあと二、三年で二十年の大台に乗る長い付き合い。その程度の切り返しに今更動揺したりしない。あっさり、にべもなく頷いた私に、この人は一つ舌打ちした。
「場所は」
「臨安です」
「時間は」
「明日の昼まで」
「物は?」
「玉の帯留めだそうです」
「……途中で質に入れちまうか」
「なら、家族を巻き込まないように離縁状を書いてからお願いします」
「冗談通じなくなったな、お前も」
「あなたに鍛えられましたから」
 少し胸を張って笑えば、けっ、とこの人は少し視線を逸らせた。
 でも、その口元は笑っている。
「じゃ、守銭奴のかみさんのために臨安まで飛ぶとするかぁ」
 そしてこの人は、私から見て木の裏側に立てかけておいた大剣を引っ張り出し、旗の鞘ごと背負って店の方へと歩いていき、すぐに戻ってくる。その手に持った木箱を着物の懐に無造作に入れ、剣を抜き払った。

 伏魔之剣。

 私たちに未だ宿る一〇八の魔星。この人に宿る天速星が目を覚まし、炎を巻き起こしながら剣の形さえ変えていく。

 その時だった。

「父ちゃん、俺も行くー!」
「あたしもー!」
「――信! 小玉!」

 家の中から飛び出してきた上の二人がこの人の背中や右手に飛びつく。
 剣から吹き出る炎に臆した様子はない。臆するわけがない。だってこの子たちは――この人の、子だ。

「――よし」

 と、この人は不意にニヤリと不敵に笑う――って、まさか、

「じゃあしっかり掴まってろ、信、小玉!」
「うん!」「おっけー!」
「素蘭、才、天娘! 土産買ってきてやるからな!」
「私、髪飾り!」「……あんまり期待しないどく」「いってらっしゃーい!」
「って戴宗さん! 信も、小玉も!」

 こうなってしまうと、もうこの人も子供たちも私の声なんて聞きはしない。上の二人は満面の笑みで父親に掴まり、この人はあの頃と同じ不敵な笑みで、声を張り上げる。

「神行昇龍!」

 垂直上昇。この狭い庭からは直接飛び立つ事は出来ないから。
 そして、江州の街の空の上から、あの人の声が降ってくる。
 神行飛龍。剣から巻き起こる炎が、あの人にひこづられてたあの頃の私みたいに、子供たちを空の彼方へ連れていく。あの頃の私ではあり得ない、とても楽しそうな笑い声つきで。
 ああ、もう。私は溜め息と共に諦めた。あの人がちゃんと仕事をしてくれる事を願って、私の傍までやってきて見送っている下の子三人と共に、帰りを待つしかない。

 ――大局的に見れば替天行道の戦いは負けで終わって、しかし宋も北から侵略してきた金国に負けて開封府を失って、南宋として出直そうとしている。
 梁山泊に集った一〇八人の宿星たちは地にひそみ、人に埋もれ、それぞれの戦いを今も続けている。この国を救う、戦いを。


 天に替わって、道を行う。
 その志を胸に、私の流星は、今日も中華の空を駆け巡る。









 はい、解説。
 李俊、朱仝、呼延灼。天コウ三十六星の一員で、特に李俊さんなんか梁山泊水軍のトップに立って『水滸後伝』じゃ梁山泊残党の首領になる、ってーのに明星未登場。泣いていいですか?(簾屋、どうも原典も含めた『水滸伝』の中で、死亡フラグがろくに立たずに見事なハッピーエンドを迎える李俊さんが好きらしいです)
 阮三兄弟で小七しか名前を出していないのは、推して知ってください。

 そんなこんなで翠蓮ちゃん視点の戴翠、その後話。
 最終的に二人で飛脚屋でもやればいいよ! というのは、元々『覚え書き』の項でやたらと長く書いたあの話の最終的なエンディングとして持ってこようと考えた設定でした。
 で、ラストの「私の流星は、今日も中華の空を駆け巡る」、明星第一回の翠蓮ちゃんのラストのモノローグと合わせた感じで、その長い捏造長編の最後を飾る一文として考えてました。
 腐らせるのも何かもったいないので、ここで再利用。
 好き勝手やりましたが、後悔はしてません。

 でもっておまけ。簾屋的戴翠チルドレンの名前と長幼対応。


 長男:戴信(たい・しん)
 長女:戴小玉(たい・しょうぎょく)
 次女:戴素蘭(たい・そらん)
 次男:戴才(たい・さい)
 三女:戴天娘(たい・てんじょう)

 ビジュアルイメージは、お父ちゃんによく似ているのが長男と長女、お母ちゃんに似ているのが次女と次男。
 性格も合わせて、実は長女が一番お父ちゃん似(長女の性格はやたら滅多に好戦的)。次女はビジュアル的にも性格的にもお母ちゃん似だが、同じくビジュアルはお母ちゃん譲りの次男の性格がどこからの隔世遺伝かは不明。
 そして三女のビジュアルは両親の色んなところが混ざっており、性格はどちらかと言えばお父ちゃん寄り。

 全くの余談ですが、色んなトラウマを克服して翠蓮ちゃんと明るく楽しく騒がしく物騒な家庭を築いた戴宗さんは、きっと娘(特に末っ子)をすごい猫可愛がりしていると面白い。それこそ、「ウチの娘に近付く奴ぁ林冲だろうが王定六だろうが宋江だろうが問答無用に灼き斬る!」的に。でもって嫁に呆れられるんだよ。「もうまったく、うちの人ってば」とか何とか言われるんだよ。


 そんなこんなで、主に簾屋の萌えでした。長々とお付き合いくださり感謝です。
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