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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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 ただいま『楊令伝』十五巻を拒否反応だったり何だったりが出つつも読書中。雨に濡れて戦袍が体に貼りついて痩せたように見える李俊殿に出会いたくて仕方がありません。あと、呉用殿は大丈夫だろうか。その辺は是非とも李俊殿に何とかしていただきたいのだが(どういう事かは、読了後の『楊令伝』感想で)。


 それはそれとして今日も行くよ!
『翠蓮受け10のお題』ブログ小話第八夜、今日のお相手は「こいつを主人公にした方がいいんじゃね?」ランキング第一位(簾屋の主観的判断)の史進だよ!




8.対峙



「第一回! 史進君の女性恐怖症を改善させちゃおう大・作・戦――――――――!」

 ドンドンドンパフパフドンドンドン――

 やや古臭い鳴り物を引き連れて、少華山三頭領の筆頭、朱武が高らかにそう宣言した。背後に控える陳達と楊春も何故か上機嫌――と言うか、楽しそうである。
「って何だこりゃ――――!?」
 そんな三人と対照的な表情で叫ぶのは、手足を縄で縛り上げられ、広場の真ん中に座り込まされている史進。仮にも梁山泊主力の一人の余りと言えば余りの姿に、外野(元少華山の手下たち)は嘆息したり野次を飛ばしたり。その中、彼は更に怒鳴る。
「どういうつもりだ朱武!? 何で俺を縛るやがる! それで……な、何だと? 俺の……じ、女性恐怖症を、か、か、改善!? てめえ、一体何考えてやがる!」
「お前の事だ史進!」
 腕を組んでの仁王立ちで言い切る朱武に、史進は絶句。
「ガバババババ! 朱武兄貴はオメエを心配してんだよ、史進!」
「君と来たら、歳頃の女性が接近するだけで飛び退いたり顔を赤くして硬直してあまつさえ失神と、見た目に反するヘタレっぷりですからね」
 陳達、楊春のそれぞれの言葉に、史進は反論する言葉もない。そこに朱武がトドメを刺す。
「お前がいつまでもそんなんじゃあ俺ら少華山組の名折れだし、いつかどっかの妓女に騙されるんじゃないかって心配なわけだ。って事で――楊春!」
「はい朱武さん。――さ、翠蓮さんこちらに」
「私が呼ばれたのってつまりそういう事なんですかー!?」
 手下たちの輪の中に待機させられていた翠蓮は叫んだ。いきなり呼び出されて何事かと思いきや、まさかのこの展開だ。突っ込まずにはいられない。そんな突っ込みも何のその、あっさりおうと頷く朱武。
「とりあえず、お前くらい小っこいのから段階を踏んで慣らしていこうと思ってな」
「君くらいの色気もへったくれもないチンチクリンなら、さすがの史進も大丈夫でしょう」
「酷い!?」
「じゃあ嬢ちゃん、悪いがちょっと頼んだぜ!」
「って陳達さん何を――きゃあああっ!?」
 投げられた。
 陳達に軽々と持ち上げられ、さながら毬のごとくポーンと。
 悲鳴を尾のように引いた体は緩い放物線を描き、広場の真ん中の史進に激突する。
「アイタタタ……――あ、ご、ごめんなさい史進さん!」
 しかし相手は縛られていても九紋龍、その鍛え上げられた体は翠蓮の軽い体がぶつかったところで揺るぎもしない。彼の胸に飛び込んだ形の翠蓮はその懐で顔を上げ、
「……史進さん?」
 硬直していた。
 あ、いや、えと、その――ぎこちない声と共に視線を逸らされた。
 思いっきりそっぽを向かれていた。
 その顔に冷や汗がダラダラと滝のように流れていた。
 耳まで真っ赤になっていた。
 えー、と翠蓮が控えめな戸惑いの声を上げた時、背後でザザザッと砂を蹴って動く音。
 振り返れば、少華山トリオがしゃがみ込んで額を突き合わせ、円陣を組んでいた。
「……おい、どうしよう」
「嬢ちゃんに反応したぜ?」
「幼女もアウトとは、ドン引きですね」
「私もう十四歳ですよ!」
 幼女発言に思わず突っ込む。が、円陣の声は尚もヒソヒソと、
「翠蓮で駄目ならあとは顧大嫂しかいねぇぜ?」
「あれの方が駄目だろ兄貴」
「ええ、彼女はどういうわけかまるで冴えない孫新さんラブですから」
「じゃあしょうがねぇ――翠蓮!」
「は、はいっ!?」
「そのままで待機!」
「はいっ――って、えええええええええっ!?」
 反射的に返事して、次の瞬間目を剥いて叫ぶ。その声にかぶってハハハという朱武の高笑い。
「史進のヤローがお前の事平気になるまで頼むぜ! そいつのためだと思ってさ!」
「え、ちょっ、まっ……待って――――!」
 さっさと去っていく少華山勢は、最早翠蓮の悲鳴などこれっぽっちも聞いておらず――


 橙頭の少年が拘束された刺青青年の世話をする少女を見つけてキレるまで、あと一分。


§


 何で史進より少華山トリオが出張ってるか? だって史進だけじゃ絡ませらんなかったんだもん!
 少華山トリオ、楊春が一番書いてて楽しかったです。何この毒舌丁寧。朱武も書いてて楽しかったです。口が悪い癖して意外と他人思いっぽいミスター神機軍師が結構好き。ジャンプ本誌で見たかったなぁ! 簾屋式でも少華山トリオは結構気合いを入れて設定しています。特に朱武がおかしな事になったけれど、それはまあさておいて。
 史進の立ち位置は完全他人。原典じゃ翠蓮ちゃんとの接点はあるんだけれど明星でその接点はなくなったので、何かない限り基本的に話さない顔を合わせない。
 そんなコンセプトのおかげで最終的にこんな話になりました。書いてて楽しかったです。
 ちなみに作中で朱武が喋った「いつか妓女に騙される」の元ネタは、原典をお読みの方はご存知でしょう、東平府のアレです。
 史進の「女が苦手」設定は、おそらく李瑞蘭を絡ませるためのものだと思うんですが、その辺どうするつもりだったの洋一!?


 明日のお相手は、簾屋を一番苦戦させたこの人、さだろくこと王定六だよ!
 ところで恋愛要素がないね。最終話も微妙だしね!
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