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更新履歴、拍手の返信、時に明星について鬱陶しいほど語ってみる
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『楊令伝』15巻をとうとう読み終わり、何か色々言いたかったり笑いたかったり溜め息吐きたかったりするけれど、それはまた今度にします。今日はこっちが最優先!
 というわけで、『翠蓮受け10のお題』ブログ小話第九夜、今日のお相手はネタ出しで一番苦戦させられた王定六だよ!




9.太白



「アニキはオイラの憧れなんス」

 と、翠蓮とそう大差ない年頃、背格好の少年は言った。孟州は十字坡、替天行道のアジトたる酒店の外の空は夜の藍色に染まろうとしていた。「ちょっとついてくるっス」と翠蓮を外に連れ出した王定六は、こちらに背を向け空を見上げている。
「オイラ、駆けっこには自信があったっス。田舎じゃ誰にも負けなかったんスよ? みぃんなオイラに負けた。オイラがこの世で一番早いんだ、って思ってたっス」
 井の中の蛙、という言葉を翠蓮は思い出していた。
「そんな時にアニキと出会ったんス。オイラ、アニキが速いのを見て、勝負に挑んで……ボロ負けしたっス」
 そう、王定六は軽く笑う。悔しさや卑屈なところが微塵も混じらない、ただただ感服したと言わんばかりの声音だった。
「だから、アニキはオイラの憧れで、目標なんス」
「――解ります」
 気が付くと、翠蓮はそう告げていた。
 王定六が振り返る。きょとんと、怪訝そうな目つき、顔つきをしていた。
「王定六さんの気持ち、私、すごく解ります」
 翠蓮もまた夜色の空を見上げる。西の空がまだ僅かに赤く明るいから、星は一つしか見えない。
「私にとっても、戴宗さんは……憧れで、目標で」
 そうして翠蓮は微笑む。穏やかな井戸の中しか知らなかった、ほんの数日前までの自分を思い出して。
 数日。ほんの数日前なのだ。この数日で翠蓮の世界は大きく様変わりした。大海を知った。否応なく知らされた。それを翠蓮に、そして王定六に教えてくれたのは、他ならぬ戴宗。
 今も翠蓮の目には焼きついている。月を背負ったあの姿。正義なんつー軽い言葉には、この志(はた)は重すぎる。そう言い放った彼の、あの強い姿。

 息をするのも忘れるほど、憧れた。

「あの星、みたいです」
 そうして彼女は夜空の一点をまっすぐに指差す。
 紫紺を背景に白々と輝く、あれは宵の明星、一番星。
 翠蓮の指先をたどった王定六はそれを見つけ、目を細め、
「――……オイラ、お前の事好きじゃあないけど」
 仏頂面で放たれた直截すぎる言葉には、もう苦笑しか出てこない。
「今の言葉には、同意するっス」
 軽く見開いた目を王定六に向ければ、彼はプイとそっぽを向いてしまう。
「……ありがとうございます、王定六さん」
 翠蓮は、ただ微笑んだ。


§



 王定六は翠蓮ちゃんのライバルもしくは同志。
 基本的に反りが合わず中が悪いけれど、戴宗さんを称える点においてはとっても気が合う、的な。
 というかそれでしかネタを組み立てられませんでしたごめんなさい。


 明日のお相手は、とうとうこの人がやってきたよ高衙内坊ちゃん!
 明日はいつもの三倍の長さでお送りします。どんな事になっているか、どうぞ見てやってくださいませ!
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